皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。あっという間に12月が過ぎ、1月も過ぎ、もう春の兆しです。
昨年12月の「京鹿子娘五人道成寺」と「二人椀久」に続きまして、今年のお正月は久しぶりに高麗屋さんと「井伊大老」の静の方を演じさせて頂きました。「井伊大老」を演じますのは、約40年振りになります。約40年前に、幸四郎さん、吉右衛門さん、私との3人が帝国劇場で三年間ほど幕を開けていました時に上演いたしました。久しぶりにご一緒できましたことを嬉しく思いましたと同時に、北条秀司先生の世界に再び入ることが出来ました喜びも有りました。北条先生の作品は「狐と笛吹き」、「末摘花」、「浮舟」など歌舞伎でも新派でも度々演出をして下さり、ご一緒させていただきました。私が21歳の頃、先代の白鴎さんが国立劇場で「井伊大老」の通し狂言を上演なさいました時に私も出させていただいた思い出がございます。北条先生の、ロマンティックな愛の世界というものを再び感じられた1月でした。また、お人形屋さんの「吉徳」さんが、七段飾りのお雛様を提供して下さり、私の唐織を使いまして立雛の衣裳を作って下さいました。そして徳利は江戸時代中期の物を使って演じさせて頂きまして、本当に久し振りにしみじみとしたお芝居でございました。
二つ目の「傾城」は、七世中村富十郎さんの七回忌ということで「越後獅子」と共に上下段で踊らせていただきました。富十郎さんとはプライベートでも大変親しくお付き合いをさせていただきました。ヨーロッパ旅行に行ったり、京都へ旅行に行ったり、あちこちでお食事をしたりと、大先輩ではありましたが大変仲良くさせていただきました。晩年に鷹之資さんがお生まれになりまして、鷹之資さんが10歳のころにお亡くなりになられましたが、鷹之資さんも努力なさって立派に舞台を務められるようになられました。鷹之資さんの舞台姿を見ておりますと、お父様の富十郎さんが彷彿とします。よく似ておられて、とても懐かしく思います。鷹之資さんもお母さまや妹さんとご一緒にお父様のことを思い出されていたのではないでしょうか。
さて私はしばらく歌舞伎座をご無沙汰いたします。2月、3月は舞台記録の編集などいたしまして、4月に下関で舞踊公演を行いまして、5月から鼓童との合作「幽玄」をオーチャードホールで開ける準備をいたします。そして6月、7月は各地での舞台のお仕事を予定しております。
また12月、1月は暖冬だと言われていたにもかかわらず、かなり冷え込みましてお芝居のことも心配しておりましたが、なんとか風邪を引かず無事に勤めることが出来ました。
まだまだ寒さが続きますが、桜が咲くのを待ちわびて、この春を迎えたいと思っております。
皆様どうぞお元気でお過ごしくださいませ。