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◇2017年4月後半版


撮影者/岡本隆史 撮影地/ローマ

皆様いかがお過ごしでいらっしゃいましょうか。素晴らしい桜の季節となりましたのに、寒くなったり雨が降ったりの4月でした。

 実は2月の末からニューヨークに行き、色々なお芝居を観て勉強をして来ました。それともう一つは、ブルガリの取材の仕事でイタリアへ撮影に行ったのです。あまりにも久しぶりのヨーロッパでしたので、逆回りになりますがいっその事ニューヨークで芝居を観てからイタリアへ入ることにしました。しかも3月1日から4日まで、ニューヨークのBAM(ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック)で鼓童の「打男」の公演が行われていましたので、その公演も見たかったのです。「打男」の海外公演は2012年のパリ・シャトレー劇場から始まり、そして今年のニューヨーク公演までを見届けたいという思いでした。今年の秋からは日本各地を「打男」ツアーが回ります。

 そしてもう一つは自分を1980年代にニューヨークのメトロポリタン・オペラハウスに呼んで下さった、当時のプロデューサーの「ジェーン・ハーマン」さんと再会したいと強く願っていました。ジェーンさん現在は80歳を過ぎられていたのですが、とてもお元気なお姿でお目にかかることができて嬉しかったです。またその頃に大変にお世話になりました「レストラン・ニッポン」でも美味しい日本食を度々頂くことが出来ました。

 現在のニューヨークでは若者がミュージカル離れをしているということでした。新しいものはそれほど生まれていませんでしたが、オフ・ブロードウェイの方にどこか力強さを感じました。そしてまたリーマンショック以来ニューヨークの経済の低迷が免れない雰囲気がありました。

 そのようなニューヨークに滞在した後は、いよいよイタリアのお話に入ることが出来ます。まずブルガリ本店があるローマへ入りました。ローマから撮影を始めまして、アッシジ、サンジミニャーノ、フィレンツェ、ベネツィアで撮影してきました。5月からホームページの表紙で皆様にヨーロッパの写真をお見せしたいと思います。また、来年のカレンダーでも掲載することが出来ると思います。

 やはりヨーロッパでも経済の問題を抱えているにもかかわらず、流石に歴史の古いイタリアという国は、しっかりとした文化があることをひしひしと感じました。今回改めて気が付いたことがあります。それは、どこへ行っても見られるものは教会に係わるものが多く、中世以降に画家として過ごした多くの芸術家のことを考えると、キリスト教というものがどのくらい文化の中心となっていたかということを感じるのでした。ある意味で日本の宗教観や文化、絵画や建物に対するものが、一つの宗教によってこれほどまで違うのかという思いがしたのでした。このお話は「和樂」という雑誌ので「かぶき夢譚」という私の特集が掲載されておりますので、そこでもお読みいただければと思います。日本の芸能文学というものが特殊であるということも感じました。どう特殊であるのかということは上手く言葉では言えませんが、空気感であるとか、神に対する思いなどが違うということもありますし、山花草木など、全ての物にも魂が宿っているという宗教観、自然に対する思い、崇めるものが自然の中にあるというものと「一つの神の中にある・・・」ということが大きく違うのだと感じましたのが、今回のヨーロッパでの感想です。過去にもそういう思いも有ったと思いますが、今回は特にそのことを強く感じました。また5月にもこのお話の続きをさせていただきます。

 今月は5月オーチャードホールから始まります「幽玄」のお稽古のために佐渡へ渡りますので、皆様にご報告できることがこれ以上ないので申し訳ありません。

 素晴らしい5月がやってくることが待ち遠しい季節です。皆さまもこの4月を十分に楽しくお過ごしくださいませ。

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