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◇2019年2月


皆様お元気でいらっしゃいますか。今月は「初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言」として、歌舞伎座の夜の部にて「名月八幡祭」に出演させていただきます。久しぶりの「美代吉」を演じさせていただきます。「三次」には片岡仁左衛門さんが出てくださいまして、先代の辰之助さんのご子息であられます尾上松緑さんと共演ということになります。追善としても共演としても充実したお芝居になるように精一杯努めたいと思っております。初世辰之助さんと私は本当に仲良くさせて頂いておりましたし、若い時にも大変お世話になりました。辰之助さんのお家では初日や千秋楽のお食事会に度々呼んでいただき、そして今の松緑君のおじい様「二代目尾上松緑」のお隣に座らせていただき楽しい時を過ごさせて頂きましたし、懐かしい思い出として心に残っております。そんな日々のかなで今の松緑さんがお生まれになり、今日に至るわけでございます。現松緑さんとはお生まれになった時から会っておりますので、伯父様のお名前で「松緑くん」と呼ぶのが恥ずかしい気もしておりました。今こうして追善狂言が上演されますことで初世辰之助さんのことが思い出される今日この頃でございます。

 1月は舞台のお休みをいただきまして、色々な資料のまとめや、後輩に対する資料作りなどを進めておりました。またこの1月は、大変残念なことですが12日に舞台照明家の池田智哉さんがお亡くなりになりました。『池田さんが元気なうちに後を継ぐ人を探さないといけない』と、ここ数年話しておりましたのに突然のことで吃驚しましたし、残念でなりません。しかしここで止まっていても仕方がないことだと皆で話し合いながら、歌舞伎座や演舞場の照明を受け持っている方たちとすぐに会合を開きまして、早速この2月公演の照明に対する話し合いをいたしました。私も及ばずながら協力し『池田さんだったらどのような照明を作るか』と考えながら皆さんと明かりの事を考えて行きたいと思っています。実は池田智哉さんは私が子役の時に一緒に舞台に出ておりまして「佐倉義民伝」の子役としてご一緒に舞台に立たせていただいたのが懐かしい思い出でございます。その「佐倉義民伝」は大阪公演もありまして、宿泊所が池田君との相部屋に泊まっておりまして懐かしくもあり、寂しい思いがいたしました。そのようなお付き合いもあり、永年池田さんの照明で舞台のお仕事を一緒にしておりました。また、池田さんの師匠であられます、歌舞伎舞台照明家の「相馬清恒」さんに私は子供の時から大変お世話になりました。相馬さんは1996年に74歳でお亡くなりになりましたが、その後を池田さんが継いでヨーロッパの各国や、ニューヨーク公演にもご一緒していただき、これまで沢山の仕事をしてきた仲でしたのでした。これから尚々心を引き締めて歌舞伎の照明というものを考え直していきたいと思います。私は様々な照明家の先生方とは大変縁が深かったのでございます。実際「明かり」ということが大好きで、翻訳物のお芝居や、新派に出演させて頂いた頃から、写実な明かり、月明かり、ガス灯の明かりなどを大変興味深く見ておりました。新派の舞台照明家の「小川昇」先生にも大変お世話になりました。小川先生は1995年に96歳でお亡くなりになりましたが、お亡くなりになられる1年前まで現役でご活躍なさっておられました。照明は才能や経験もありますが、「目で何を見ているのか」ということが何より大事なことだと感じさせられます。小川先生、相馬先生には本当に色々と教えていただきました。特に私が小さいころに相馬清恒先生は歌舞伎座の3階の上の方でセンタースポットを当てる所にいらっしゃいましたので、相馬さんのところに遊びに行き、照明の機械を触りながら、遊ばせて頂いたり、学ばせていただいた思い出があります。そんなご縁もありまして照明には深く関わらせていただきました。これから歌舞伎の演出などがどのような方向に進んでいくのかよく考えながらこの2月の公演に向かうつもりでございます。

 また3月は南座で「阿古屋」を演じさせていただきますが、お陰様でほとんど売り切れとなっているようでございまして、本当に有り難いことだと思っております。この2月、3月の舞台を精一杯務めそして毎日無事に舞台に立てることが今の私の務めでもあります。

 そして1月の初めに、私の日生劇場における「世界のうた」としてもコンサートの発表をさせて頂きました。その他に「八千代座」「南座」「福井県のフェニックスプラザ」などでも予定しております。チケットは2月の後半には売り出しのようでございますので、その時には改めて掲載される記事もあると思います。皆様お時間がございましたら、何卒コンサートの方にもお足をお運びくださいますようお願い申し上げます。まだまだ寒さも続きます。お体に気を付けてお過ごしくださいませ。それでは劇場でお待ち申し上げております。

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