寒い日が続いた1月でしたが皆様いかがお過ごしなされましたでしょうか。年末…お正月…と言っているうちに、もう2月になってしまいました。今年の1月は松竹座開場100周年記念公演で「幽玄」を上演させて頂きました。去年12月の末に一度松竹座に入りまして舞台の仕込みをし、そして年明けの2日から松竹座の舞台での稽古を行いまして5日に初日を開けることができました。5年ぶりの「幽玄」でしたが皆で精一杯務めさせていただきました。松竹座のプログラムにも書かせて頂きましたが、お正月をこの松竹座で迎えられましたことは私としましても大変嬉しい事です。また昨年の11月と12月には團十郎白猿襲名興行に出演させて頂きまして本当に有り難いと思っております。
実はこの1月は、ほとんどお話しする事はないのでございます。と申しますのも「幽玄」は自分の出演時間がそれほど長くないにも関わらず、やはり緊張感のある出し物でもあり、松竹座とホテルの移動、そして自分の体をケアするだけで精一杯でした。お休みの日は1日中ホテルの部屋で暮らしていたというわけです。1月の末には1つだけ「講演」のお仕事で九州に行かせて頂きまして、2月はお休みを頂き、3月と4月の舞台の準備をしながら過ごしてまいります。来月のコメントでは色々なご報告が出来るかと思います。
実はあまりこういうお話はしたくないと思いましたが、今年の1月も3年前と同じように各劇場が休演になることが度々おきまして、自分の劇場でもいつ中止になるのかと心配する日々でした。特に去年の1月松竹座、2月博多座公演中には東京や各地方の劇場が相次いで中止となり、毎日無事を祈って過ごしておりました。今年こそは緩和もされると思っておりましたが、やはり再度厳しい波がやってきたのです。
しかし皆様のお陰で何とか無事に千秋楽を迎えさせていただきました。この3年間はあまり思ったことがなかったのですが、今年になり世間が普段通りに動き出したにも関わらず、劇場が閉まることになりますと劇場で生きている人たちには大変な打撃だということを改めて痛感させられるのです。これから先も春になったから、夏になったから収まる、ということでは無いような気がしてなりません。私はまだ感染した経験がないので感染する可能性は高いと思いますが、出来る限り気をつけて過ごしたいと思います。
3年前にメルケル前首相が「このコロナは地球上の人間の6割が免疫を持たなければ収まらない」とおっしゃっておりました。そのメルケル首相の言葉が今も心に残っています。また「何処か一つの国のコロナが無くなっても、世界中コロナ禍が収まらない限り全世界のパンデミックは収まらない」ともおっしゃっておられました。さまざまな意味で世界中の免疫が出来るまで待つしかありません。せめて劇場ではこのような現実をお忘れ頂くことが私どもの務めだと思います。
それでは皆様、また3月歌舞伎座でお目にかかりたいと思います。
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