皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。なかなか涼しさがやって来ない9月でしたが、中秋の名月ということで、知り合いの方から頂いたお月様に添えるお団子を子供の時以来のお月見をしながら食べました。
9月は歌舞伎座で「妹背山婦女庭訓」の「太宰館花渡し」と「吉野川」の段を7年ぶりに演じさせていただきました。定高は大役であり、当代の尾上松録さんとは今回初めての上演でございましたし、また、市川染五郎さん、尾上左近さんとの「吉野川」ということで、皆様にご覧にいただけるできる限りの舞台を務めようと思う毎日でした。そのため休演日は、ひたすら自宅で休んでおりました。この9月は、台風がいくつかやってまいりまして、気候不順でもあり、また地方からいらっしゃる方の交通にもいろいろな問題があったのかもしれません。10月はどんな気候になりますか、少しでも清涼とした10月を迎えられるようにと願っています。
この10月は歌舞伎座では初めての「婦系図」を上演させていただきます。その後には「源氏物語」の「六条御息所の巻」も初めて上演させていただきます。片岡仁左衛門さんは過去3度ほど「婦系図」を上演なさっていらっしゃるようですが、私は40年ほど前に演舞場で二世中村吉右衛門さんと共演させて頂きまして以来今回が2度目になります。1回目が演舞場、2回目が歌舞伎座ということで、新派の演劇が歌舞伎座の枠にはまるかどうか大変心配でもありますが、仁左衛門さんとご一緒に精一杯務めさせていただきます。また偶然なのですが、この「源氏物語」の「六条御息所の巻」は言わば舞踊の「葵の上」にも出て来るところで、いずれは劇場で上演したいと思っておりましたお芝居でございます。新しく脚本を書いていただきまして、今井豊茂さんの演出で、私が監修もさせて頂きます。染五郎さんは初めての光源氏です。過去の多くの先輩から受け継がれてきた歌舞伎座での光源氏ですが、またここに新しい光源氏が生まれますことを大変嬉しく思っております。私のお役は、正妻の葵の上に嫉妬する六条御息所ですので、このお役なら何とか染五郎さんとご一緒できるのかなと思っております。年齢の差もありますので心配はしておりますが、できるだけ美しい「源氏物語」になりますように、歌舞伎座の制作の方々と御一緒に一生懸命舞台を創らせていただきます。
9月歌舞伎座の千秋楽を迎えまして、早速あくる日から10月のお稽古に入らせていただきまして、無事に初日を開けられるよう精一杯の毎日でございました。9月は大勢のお客様にご来場いただきまして大変嬉しく思いましたし、引き続きこの10月も大勢のお客様にご来場いただけますよう願っております。また、12月の演目も発表になりました。今年も充実した1年を送りたいなと思うこの秋でございます。 10月も歌舞伎座に全力をつくしたいと思っておりますので、皆様のご来場をお待ち申し上げております。皆様が素晴らしい秋をお過ごし下さるようにお祈り申し上げます。
十月大歌舞伎、婦系図と源氏物語を拝見しました。どちらもとても素晴らしかったです。
十二月の天守物語も今から楽しみにしています。